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創作 薪さんのヒ・ミ・ツ

  1. 2015/04/28(火) 00:36:22_
  2. 仮眠室の枕(秘密創作短編)
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
ぎゃーーー
明日、いや、本日発売日じゃないかい!

すみません。
返事は明日、いや、今日?



 
 





「最近、岡部の様子がおかしいようだが、何かあったか?」
 薪は、仕事上の打ち合わせがあるのはまったくもって当然だというふりをして波多野を所長室に首尾良く連れ込むと、さっそく聞いてみた。彼女は観察眼が鋭い。波多野の申し出を断って、自らコーヒーメーカーに豆(当然、挽いてある)と水をセットしながら、そこの椅子に座るように促す。
 現在は、ヒマというわけではないが、死ぬの生きるので切羽詰まっているわけではない。岡部だけ極秘捜査をやっているわけでもない。なのに、岡部だけが違う。明らかにおかしい。
 見かけによらず小心者で、顔に似合わずのみの心臓。これまでも挙動不審に陥ることが度々あったし、また警視総監ラインから妙な指令でも受けたのかと思って放置していたのだが、それにしたって最近の様子は異常だった。

「岡部室長ですか?」
 波多野は、よくぞ聞いてくれましたとばかりに目をキラキラさせた。
「実はですね、室長、好きな人ができたんじゃないかって噂してるんですっっっ」
「・・・・・・え?」
 予想していない答えが返ってきて、薪は目を剥いた。何かあったかというのは、「仕事で」何かあったかと聞いたつもりだったのだが。
 岡部に?
 好きな、人=女性?  
 なんだ、それは。
薪は、むっとした一瞬の後、自分に怒る権利はないと思って冷静に努め、そして考えた(何故一瞬でもむかついたのかは無視した)。
 そりゃ、岡部は美人好きだが、どっちかというと「美人が好き」なだけで、自分からは声も掛けられないような相手の美しさに見とれるだけだ、というのが今までのところだった。
 だから部下の波多野とは遠慮なくいつも言葉を交わしている・・・・・・と、薪は今の考えは目の前の新人女性に対して大変失礼であったと反省し、その顔を改めてまじっと見つめた。波多野は、決して不美人ではない。むしろ可愛い部類に入っていると言ってよいしスタイルもいい。髪を少し伸ばして眼鏡をやめてコンタクトにし、それだけでも良いが、色の白いは七難隠すとソバカスをなんとかすれば・・・・・・。
「所長、信じてないでしょ、その顔は?」
 薪は岡部のことではなく波多野のことを考えていたので本人に覗きこまれて心臓が仰け反った。が、彼女は所長の頭の中などどうでもいいとばかりに続けた。
 「だって、岡部さん、しょっちゅう」

「S・ウ」
「K・イ」
「D・ア」

と、波多野は唇をゆっくり動かす。
「・・・・・・好きだ・・・・・・?」
 薪を衝撃が襲った。岡部に独り言(動きだけ)を言うくらい、思っている人が・・・・・・・・・。 
 薪は手を顎にかけて視線を向かいの波多野のさらに向こうの宙へ放った。
「好きだ、好きだ、好きだ・・・・・・」
 薪が何度か口の動きを確認するようにもごもごと繰り返していると、
「所長、好きだ好きだって目の前でこっちを見ながら繰り返されると、私、自分が言われてるみたいに思っちゃいますよ?」
 と言って、波多野が下から薪を見上げたので、薪は今度は本当に仰け反った。
「え? ああ、ごめん」
 薪は思わず顔を赤らめた。そういうことを言うか、普通? ああ、でもここで謝ったら、波多野に失礼だったろうか、いやしかし、無駄に誤解を生じさせるのは今後のためによくないから、違う場合は違うとはっきり言っておいた方が、とかなんとか、薪は心の中でしどもどした。
「でも、最初に波多野が僕に言ったんだろ?」
「あは! そうでした」
 波多野の様子からして、岡部に加えて自分もなんとも思われてなさそうだと分かるのは、気楽ではあったが少々寂しいという気もした。つまり、若い女性の眼中にないらしいということで。

 道が逸れた。岡部に戻す。
「ふう~ん、そうなんだ。波多野、さすが女子だな」
「えへへ♪」
 薪はあんまりそういう点で女子っぽくない女性を思い浮かべて、ニヤリとした。
「それから、まずい、まずいってうなってます」
「・・・・・・そっちは捜査上のことだろうな」
 と、口では言ってみたもののいまひとつ腑に落ちない。まずいまずいというような面倒な案件は、最近は発生していない、と思うが、それは概ね口を出して結果を見ている立場の薪だから思うことであって、現場総監督の岡部としては、いろいろ「まずい、まずい」の事態になっている可能性はおおいに有り得る。
「でも、きっと、デートの約束ができなくて、振られちゃいそうだから、まずいんじゃないでしょうか?」
 いや、いくらなんでも、と言いかけて、波多野の目つきが心なしからんらんとしてきたので同意することとする。
「そういう線もあるかな」 
 何が「線」だか。 
「そうですよ!」
 短髪でメガネでそばかす丸出しでも、波多野は恋に恋する乙女かと、岡部の相手が実は波多野だったら「まずい、まずい」になるだろうなとちょっと思ったが、やはりその「線」はないかという気もする。
 そして、入れたてのコーヒーを飲みながら、ああでもこうでも捜査顔負けの推察を繰り返し、波多野は、最後はワナワナと震えながら部屋を出て行った。


 数日後。
 岡部の歩く姿が元気になったのが目に見えて分かった。
「岡部、うまく行ったのかな」
「きっと、そうですよ! 来年は結婚式ですね!」
「楽しみだな。波多野のドレス姿もついでに拝ませてもらおうかな」
「えー、私ですか? 化けますよ? 所長の腰を抜かしてみせますからね?」
「それは楽しみだ。じゃ、岡部の件も片付いたことだし、捜査対象を仕事に戻してくれるかな?」
 薪はそういってにやりと笑った。


 岡部が何に気を取られているのか知ったことではないが、薪は周囲に気取られるようなマネをするわけにはいかなかった。波多野の観察眼が岡部に集中しているのは、好都合だったが、それももう終わりだ。気をつけなければ。
 かくして、いつも機嫌の良し悪し(というか、悪い時)が態度に出過ぎる薪は、いつにも増してカリカリとして・・・・・・いる風を装っていた。

 なぜだ。なぜ、何も言わずに帰ってしまったんだ、青木。入院中も見舞いに行けばついつい目をそらすし、退院の時も、他人行儀の礼儀正しさだったし(他人には違いないが)、やっと月一会議に出るようになったと思ったら、仕事の話だけして、後は黙って帰ってしまうし、それでは、あの手紙は一体何だったというのだ。
 次は、青木の目が覚めている時に言おう、おまえの言う家族になりたいと、それを自分に言ってくれることが心から嬉しいと、今度青木に会ったら言おうと、ずっと思っていたのに。

 どうして、急に?
 あの手紙は、何だったんだ?
 僕の返事を聞きたかったんじゃなかったのか?
 それとも、「そういう」意味じゃなかったとか、手紙を読んだかと聞いたのは、出した後で気持ちが変わったとか、それで聞いたのか?

 薪は、急に、あの子犬のような目をしなくなった青木に、まるで失恋したような気持ちを味わっていた。

 なぜだ、なぜだ、なぜだ。
 分からなければ、聞けばいい。だが、拒否する言葉だったらどうしようかと思うと聞くこともできない。こちらから青木を訪ねることもできない。なぜできない。行けばいいじゃないか!

 岡部との会話の中で、薪は青木を好きだと言った。自分だけではどうしようもなく不安になり、どんな意味でも良いから、誰かに聞いてもらいたかった。その誰かも岡部なら信頼できた。しかし、こんな気持ちまでバレる訳にはいかない。どうしよう。

 やっぱり、何か用事を作って、福岡に行こうか、な。
 何か、福岡に行く仕事、ないかな。

 (九州で事件が起・・・・・・・・・っとっとっと、あぶないあぶない)


~~~~~~~~~~~~

お読みいただきましてありがとうございました。
自分が発端のくせに、恋に狂っているのか、妙な方向性の薪さんでした。


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部下Y(イプシロン)。清水玲子先生の「秘密-トップ・シークレット-」を愛するブログです。

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